
日々の生活の中で、何かを必死に決断しようとしているとき、
あるいは深く落ち込んでいるとき、頭の中で「もう一人の自分」と会話を
していることはありませんか?
「本当にこっちの道でいいの?」と問いかけてくる自分。
「大丈夫、よく頑張ったよ」とそっと寄り添ってくれる自分。
まるで心の中に頼れる相棒や、もう一人のカウンセラーが住んでいる
かのようなこの感覚。
実はこれ、決して特別なことではなく、私たちの心が持つ非常にしなやかで健康な
防衛本能であり、心理学的なメカニズムなのです。
今回は、心の中に「もう一人の自分」がいて、日々寄り添ってくれている人の心理と
そのメリットについて紐解いていきます。
1.心理学から見る「もう一人の自分」の正体
心の中に別の視点が存在することを、心理学ではいくつかの概念で説明することが
できます。
◆ 自己対話(インナーディスコース)
人間は誰しも、頭の中で言葉を使って思考しています。これを「内面化された会話」と
呼びます。心の中の相棒は、あなたがこれまでの人生で出会った優しい人(両親、恩師、
友人)の言葉や、自分自身が理想とする姿が形を成したものです。
◆ 客観的な視点(メタ認知)
「メタ認知」とは、自分の思考や行動を、一歩引いた高い視点から客観的に認知する
能力のことです。
主観的な自分: 「悲しい」「どうしよう、決められない」と感情の渦中にいる自分
客観的な自分(もう一人の自分): 「今、すごく焦っているな」「一度冷静になろう」と
観察する自分
この2つの視点が行き来することで、心の中の会話が生まれます。
2.シチュエーション別:もう一人の自分が果たす役割
この「もう一人の自分」は、私たちの感情の波に合わせて、絶妙なコンビネーションを
発揮してくれます。
・物事を決めるとき:冷静な「アドバイザー」
大きな決断を迫られたとき、感情に流されそうな自分を「本当にそれで後悔しない?」
と引き留めたり、「リスクはこっちの方が少ないよ」と論理的に整理してくれたりします。
直感(主観)と論理(客観)のバランスを、脳内会議でとっている状態です。
・落ち込んだとき:無条件の「味方・カウンセラー」
誰にも言えない弱音を吐いたとき、心の中の彼は絶対にあなたを否定しません。
「辛かったね」「君のせいじゃないよ」と、一番欲しい言葉を一番良いタイミングで
投げかけてくれます。これは、自分自身を優しく労わる
「セルフ・コンパッション(自己慈悲)」が非常に高い状態と言えます。
・楽しいとき:喜びを増幅させる「親友」
嬉しいことがあったとき、「やったね!」「本当に良かった!」と、心の中でハイタッチ
をするような感覚です。喜びを誰かと共有することで、幸福感は倍増します。
それをセルフで行うことで、ポジティブなエネルギーを自分で満たすことができます。
3.「もう一人の自分」がいる人の心理的特徴とメリット
心の中に寄り添ってくれる自分がいる人は、以下のような素晴らしい心の強さ
(心理的レジリエンス)を持っています。そんな人の特徴は、
・感情のコントロールが上手: 孤独感や不安に襲われても、自分で自分をなだめる
(セルフケア)ができるため、感情的に自滅することが少ないです。
・自己理解が深い: 常に自分と対話しているため、「自分が本当はどうしたいのか」
「何に傷ついているのか」をよく分かっています。
・精神的な自立: 他者からの評価や慰めに過度に依存せず、自分の足で立つ強さを
持っています。
4.まとめ:その「相棒」は、あなたが育てた最高の資産
「自分の中に別の自分がいるなんて、少し変なのかな?」と不安に思う必要はまったく
ありません。むしろ、それだけあなたの想像力が豊かで、心の防衛システムが優秀に機能
している証拠です。
人生という長い旅路において、24時間365日、どんな時もあなたの味方でいてくれる存
在――それは、あなたがこれまでの経験の中で作り上げ、育ててきた「最高の相棒」です。
今日、何か選択に迷ったり、心が折れそうになったりしたら、ぜひ胸の内の相棒に話しか
けてみてください。彼はきっと、凛とした佇まいで、あなたを未来へと導く言葉を返してく
れるはずです。
実は、これを書いている、私自身も小学校のころから、もう一人の自分がいて、かれこれ
48年くらいの相棒です。励ましてくれたり、応援してくれたり、反省を促してもくれます。
私の軸がブレなかったり、レジリエンス力が高いのはそのおかげだと思っています。
(次の回は、多重人格との違いについて書きます。)